やはり地球科学たるもの、球面調和関数くらいは知っておきたいところである。 しかしその前に準備として、Legendre多項式やLegendre陪関数も知って おかなければならない。
Legendre多項式 (Legendre polynomial) は、区間 で定義さ れた直交多項式であり、球対称性をもつ体系について偏微分方程式を解く際によ く登場する。
かつ に対して
(E.1) |
と関数を定義する。 この関数を
(E.2) |
のように についてのべき級数に展開したとする。 このときのべき乗の展開係数として登場する関数をLegendre多 項式という。 (ちなみに は母関数と呼ばれる。)
Legendre関数は次の直交性を満たす。
(E.6) |
加えて、Legendre関数はの区間で完全系をなす。 すなわちの区間で定義された任意の関数を
(E.7) |
と展開でき、かつ係数は
(E.8) |
により求められる。
3次元球座標系でスカラー量のラプラス方程式は
のように書ける。 以下では、経度の方向に一様 () である場合 に限定し、かつこれに
という形 (変数分離形という) を仮定して代入すると、
これが全ての、で成り立つためには、
でなければならない。 そのためには、を定数として、
地球惑星の外部を考える際には、解は で有界であるべきだから
のように変数分離解が与えられる。
Legendre陪関数 は、Legendre関数を微分したもの に相当する。
(E.12) |
ただし のとりうる範囲として意味があるのは、 に限られ る。
は以下のような性質をもつ。
(E.13) | ||||
(E.14) | ||||
(E.15) | ||||
(E.16) |
Legendre陪関数は次の微分方程式を満たす。
(E.17) |
これを「Legendreの陪微分方程式」という。
ここで、 () と変数変換すると
(E.18) |
を得る。
3次元球座標系でスカラー量のラプラス方程式に
という形 (変数分離形という) を仮定して代入・整理すると
これが全ての、、で成り立つためには、
でなければならない。 そのためには、を定数として、
地球惑星の外部を考える際には、解は で有界であるべきだから
のように変数分離解が与えられる。
を一定とすると、 は に関して次のような直交性をもつ。
(E.19) |
ここまでで定義したルジャンドル陪関数では、( や) が大きくなると、 関数の値が大きくなり過ぎてしまうのが不便である。 そこで、これを避けるようにルジャンドル陪関数を「正規化」したものがいくつ か提案されている。
その1つが「完全正規化されたルジャンドル陪関数」であり、 以下のように定義されている。
(E.20) |
を一定とすると、 は に関して次のような直交性をもつ。
(E.21) |
ここで用いた「正規化」は、次に登場する球面調和関数の定義で用いられている ものとも異なることに注意。
球面調和関数 (あるいは球面関数) は Legendre 陪関 数 と指数関数を用いて
(E.22) |
により定義される (位相因子をつける流儀もあり)。 ここでは補緯度、は経度である。 添字の (degree) と (order) は整数であって、かつ に限られる。 式(E.22)内のLegendre陪関数 は Legendre 多項式 から
(E.23) | ||||
(E.24) | ||||
(E.25) |
とについて、
は、 を満たすの数を表す。
は、 を満たすの数を表す。
この定義によれば、に対するの具体的な 関数形は次のようになる。
球面調和関数の正規直交性
(E.27) |
が得られる。 これより、任意の関数 を
(E.28) |
の如く球面調和関数展開できる。 ここで
(E.29) |
である。
Laplacian をに関する微分演算子とそれ以外の演算子に分 離しておこう。
(E.30) |
ただし、
(E.31) |
である。 これより、
(E.32) |
がいえる。 さらに式(E.30)より、
(E.33) |
と定義すれば、
(E.34) |
と書ける。
を満たすようなベクトル場 (solenoidal) は、 ポロイダル場
(E.35) |
とトロイダル場
(E.36) |
の和で書くことができる。 各々を球座標系の成分で書き下すと、
(E.37) | ||||
(E.38) |
となる。 さらにやを式(E.28)に倣って球面調和関数展開してみよう。 こうして得られる展開係数(の関数でもある)は
(E.39) | ||||
(E.40) |
となる。