Appendix E 球面調和関数

やはり地球科学たるもの、球面調和関数くらいは知っておきたいところである。 しかしその前に準備として、Legendre多項式やLegendre陪関数も知って おかなければならない。

E.1 準備その1: Legendre多項式 (Legendre関数)

Legendre多項式 (Legendre polynomial) は、区間 −1≤x≤1で定義さ れた直交多項式であり、球対称性をもつ体系について偏微分方程式を解く際によ く登場する。

E.1.1 母関数による定義

|t|<1 かつ |x|≤1に対して

g⁢(t,x)≡11−2⁢t⁢x+t2 (E.1)

と関数g⁢(t,x)を定義する。 この関数を

g⁢(t,x)=∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn (E.2)

のように tについてのべき級数に展開したとする。 このときtのべき乗の展開係数として登場する関数Pn⁢(x)をLegendre多 項式という。 (ちなみに g⁢(t,x) は母関数と呼ばれる。)

式(E.1)の意味を考えるため、2次元デカルト座標系において原点 O か らx軸方向にaだけずれた位置にある点Qと任意の点Pとの距離lを考える。 点Pの座標を(X,Y)と書き、かつ2次元極座標を用いて

X=r⁢cos⁡θ,Y=r⁢sin⁡θ

と書くことにすると、1/lは

1l =1(X−a)2+Y2
=1r2−2⁢a⁢r⁢cos⁡θ+a2=1r⁢11−2⁢(a/r)⁢cos⁡θ+(a/r)2 (E.3)

と与えられる。 これは式(E.1)において、t→a/r かつ x→cos⁡θ と置 き換えたものにほかならない。

E.1.2 Legendre多項式の表式

Legendre多項式をあらわに書き下すと、その表式は

Pn⁢(x) =12n⁢∑k=0[n/2](−1)kk!⁢(2⁢n−2⁢k)!(n−2⁢k)!⁢(n−k)!⁢xn−2⁢k (E.4)
=12n⁢n!⁢dnd⁢xn⁢(x2−1)n (E.5)

などと書ける。 ここで[n/2]は n/2を超えない整数を意味する。 なお式(E.5)は「ロドリグの公式」とも呼ばれる。

E.1.3 Legendre 多項式の漸化式

以下の3つが基本的なものであろう。

(2⁢n+1)⁢x⁢Pn⁢(x)=(n+1)⁢Pn+1⁢(x)+n⁢Pn−1⁢(x) (E.6)
[(1−x2)⁢dd⁢x−(n+1)⁢x]⁢Pn⁢(x)=−(n+1)⁢Pn+1⁢(x) (E.7)
[(1−x2)⁢dd⁢x+n⁢x]⁢Pn⁢(x)=n⁢Pn−1⁢(x) (E.8)

ここで、式(E.7)や(E.8)の左辺[]中の演算子は、 Pn⁢(x)の次数nを上げたり下げたりする役割をしていることから、昇降演算 子と呼ばれることがある。 これらの漸化式は、母関数の定義式(E.1)と(E.2)から容易に 導かれる。 式(E.1)と(E.2)を t で偏微分すると

∂g∂t =∂∂t⁢(1−2⁢t⁢x+t2)−1/2=g⁢x−t1−2⁢t⁢x+t2=∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn⁢x−t1−2⁢t⁢x+t2
∂g∂t =∂∂t⁢[∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn]=∑n=0∞n⁢Pn⁢(x)⁢tn−1

この両者が等しいことから

0 =∑n=0∞n⁢Pn⁢tn−1−∑n=0∞Pn⁢tn⁢x−t1−2⁢t⁢x+t2
=11−2⁢t⁢x+t2⁢[∑n=0∞n⁢Pn⁢tn−1⁢(1−2⁢t⁢x+t2)−∑n=0∞Pn⁢tn⁢(x−t)]
=11−2⁢t⁢x+t2⁢[∑n=0∞(n⁢Pn⁢tn−1−2⁢n⁢x⁢Pn⁢tn+n⁢Pn⁢tn+1)−∑n=0∞(x⁢Pn⁢tn−Pn⁢tn+1)]
=11−2⁢t⁢x+t2⁢[∑k=−1∞(k+1)⁢Pk+1⁢tk−∑n=0∞2⁢n⁢x⁢Pn⁢tn+∑k=1∞(k−1)⁢Pk−1⁢tk−∑n=0∞x⁢Pn⁢tn+∑k=1∞Pk−1⁢tk]
=11−2⁢t⁢x+t2⁢∑n[(n+1)⁢Pn+1−(2⁢n+1)⁢x⁢Pn+n⁢Pn−1]⁢tn

これが任意のtについて成り立つことから式(E.6)が得られる。 同様にこれらを xで偏微分すると

∂g∂x =∂∂x⁢(1−2⁢t⁢x+t2)−1/2=g⁢t1−2⁢t⁢x+t2=∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn⁢t1−2⁢t⁢x+t2
∂g∂x =∂∂x⁢[∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn]=∑n=0∞d⁢Pn⁢(x)d⁢x⁢tn

この両者が等しいことから

0 =∑n=0∞d⁢Pn⁢(x)d⁢x⁢tn−∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn⁢t1−2⁢t⁢x+t2
=t1−2⁢t⁢x+t2⁢[∑n=0∞d⁢Pn⁢(x)d⁢x⁢1−2⁢t⁢x+t2t⁢tn−∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn]
=t1−2⁢t⁢x+t2⁢[∑n=−1∞d⁢Pn+1⁢(x)d⁢x⁢tn−∑n=0∞d⁢Pn⁢(x)d⁢x⁢2⁢x⁢tn+∑n=1∞d⁢Pn−1⁢(x)d⁢x⁢tn−∑n=0∞Pn⁢(x)⁢tn]
=t1−2⁢t⁢x+t2⁢∑m[d⁢Pn+1⁢(x)d⁢x−d⁢Pn⁢(x)d⁢x⁢2⁢x+d⁢Pn−1⁢(x)d⁢x−Pn⁢(x)]⁢tn

これが任意のtについて成り立つことから

Pn+1′⁢(x)−2⁢x⁢Pn′⁢(x)+Pn−1′⁢(x)=Pn⁢(x) (E.9)

なる漸化式も得られる。 さらに式(E.6)の両辺を x で微分すると

(2⁢n+1)⁢[x⁢Pn′⁢(x)+Pn⁢(x)]=(n+1)⁢Pn+1′⁢(x)+n⁢Pn−1′⁢(x) (E.10)

であるが、これを用いて(E.9)から Pn+1′ ある いは Pn−1′ を消去して整理すると、

Pn+1′⁢(x)−x⁢Pn′⁢(x)=(n+1)⁢Pn⁢(x) (E.11)
x⁢Pn′⁢(x)−Pn−1′⁢(x)=n⁢Pn⁢(x) (E.12)

式(E.11)で n→n−1と置き換えた式と 式(E.12)からPn−1′⁢(x)を消去すると 式(E.8)が得られる。 さらに式(E.6)と(E.8)からPn−1⁢(x)を消去すると 式(E.7)が得られる。

E.1.4 Legendre多項式の直交性と完全性

Legendre関数は次の直交性を満たす。

∫−11Pm⁢(x)⁢Pn⁢(x)⁢𝑑x=22⁢n+1⁢δm⁢n (E.13)

加えて、Legendre関数Pn⁢(x)は−1≤x≤1の区間で完全系をなす。 すなわち−1≤x≤1の区間で定義された任意の関数f⁢(x)を

f⁢(x)=∑ncn⁢Pn⁢(x) (E.14)

と展開でき、かつ係数cnは

cn=2⁢n+12⁢∫−11f⁢(x)⁢Pn⁢(x)⁢𝑑x (E.15)

により求められる。

E.1.5 Legendreの微分方程式

Legendre関数は次の微分方程式を満たす。

dd⁢x⁢[(1−x2)⁢d⁢Pn⁢(x)d⁢x]+n⁢(n+1)⁢Pn⁢(x)=0 (E.16)

式(E.16)を「Legendreの微分方程式」という。 ここで、x=cos⁡θ (d⁢x=−sin⁡θ⁢d⁢θ) と変数変換すると

0 =−1sin⁡θ⁢dd⁢θ⁢[−(1−cos2⁡θ)⁢1sin⁡θ⁢d⁢Pnd⁢θ]+n⁢(n+1)⁢Pn (E.17)
=1sin⁡θ⁢dd⁢θ⁢[sin⁡θ⁢d⁢Pn⁢(cos⁡θ)d⁢θ]+n⁢(n+1)⁢Pn⁢(cos⁡θ) (E.18)

E.1.6 Legendre多項式の用途の例: 軸対称性をもつ3次元極座標系 におけるラプラス方程式の変数分離解

3次元球座標系でスカラー量fのラプラス方程式は

0=∇2f=1r2⁢∂∂r⁢(r2⁢∂f∂r)+1r2⁢1sin⁡θ⁢∂∂θ⁢(sin⁡θ⁢∂f∂θ)+1r2⁢1sin2⁡θ⁢∂2f∂ϕ2

のように書ける。 以下では、経度ϕの方向に一様 (∂/∂ϕ=0) である場合 に限定し、かつこれに

f⁢(r,θ,ϕ)=∑nRn⁢(r)⁢Pn⁢(cos⁡θ)

という形 (変数分離形という) を仮定して代入すると、

0 =∑n1r2⁢dd⁢r⁢(r2⁢d⁢Rnd⁢r)⁢Pn+∑n1r2⁢1sin⁡θ⁢dd⁢θ⁢(sin⁡θ⁢d⁢Pnd⁢θ)⏟≡−n⁢(n+1)⁢Pn⁢Rn
=∑n1r2⁢[1Rn⁢dd⁢r⁢(r2⁢d⁢Rnd⁢r)−n⁢(n+1)]⁢Rn⁢Pn

これが全てのr、θで成り立つためには、

0=1Rn⁢dd⁢r⁢(r2⁢d⁢Rnd⁢r)−n⁢(n+1)

でなければならない。 そのためには、cnを定数として、

Rn=cn⁢rnあるいはRn=cn⁢r−(n+1)

地球惑星の外部を考える際には、解は r→∞で有界であるべきだから

f(r,θ,ϕ)=∑ncn⁢r−(n+1)⁢Pn⁢(cos⁡θ)

のように変数分離解が与えられる。

E.2 準備その2: Legendre陪関数

E.2.1 Legendre陪関数の表式

Legendre陪関数 Pnm⁢(x)は、Legendre関数Pn⁢(x)を微分したもの に相当する。

Pnm⁢(x)=12n⁢n!⁢(1−x2)m/2⁢dn+md⁢xn+m⁢(x2−1)n (E.19)

ただし m のとりうる範囲として意味があるのは、−n≤m≤n に限られ る。 また Numerical Recipes in Fortran など別の資料では、(−1)m という因子 を含めているなど、式(E.19) とは異なる定義がされていることもあるこ とにも注意が必要である。

Pnm⁢(x)は以下のような性質をもつ。

Pnm=0⁢(x) =Pn⁢(x) (E.20)
Pnm=n⁢(x) =(2⁢n)!2n⁢n!⁢(1−x2)n/2 (E.21)
Pnm≥0⁢(x) =(1−x2)m/2⁢dmd⁢xm⁢Pn⁢(x) (E.22)
Pn−m =(−1)m⁢(n−m)!(n+m)!⁢Pnm⁢(x) (E.23)

E.2.2 Legendre 陪関数の漸化式

次数nは同じで陪数 m が異なるものを結ぶ漸化式として、 例えば以下のようなものがある。

[(1−x2)⁢dd⁢x+m⁢x]⁢Pnm⁢(x) =1−x2⁢Pnm+1⁢(x) (E.24)
[(1−x2)⁢dd⁢x−m⁢x]⁢Pnm⁢(x) =−(n+m)⁢(n−m+1)⁢1−x2⁢Pnm−1⁢(x) (E.25)

これらは(E.22)や(E.23)式から容易に導かれる。 具体的には

dd⁢x⁢Pnm⁢(x) =dd⁢x⁢[(1−x2)m/2⁢dmd⁢xm⁢Pn⁢(x)]
=(1−x2)m/2⁢m2⁢−2⁢x1−x2⁢dmd⁢xm⁢Pn⁢(x)+(1−x2)m/2⁢dm+1d⁢xm+1⁢Pn⁢(x)
=11−x2⁢[−m⁢x⁢(1−x2)m/2⁢dmd⁢xm⁢Pn⁢(x)+(1−x2)1/2⁢(1−x2)(m+1)/2⁢dm+1d⁢xm+1⁢Pn⁢(x)]
=11−x2⁢[−m⁢x⁢Pnm⁢(x)+1−x2⁢Pnm+1⁢(x)]

であるが、これを書き直せば(E.24)式が得られる。 さらに(E.24)式でm→−mと入れ換えてみると

[(1−x2)⁢dd⁢x−m⁢x]⁢Pn−m⁢(x)=1−x2⁢Pn−m+1⁢(x)

かつ(E.23)式から

Pn−m=(−1)m⁢(n−m)!(n+m)!⁢Pnm⁢(x)Pn−m+1=Pn−(m−1)=(−1)m−1⁢(n−m+1)!(n+m−1)!⁢Pnm−1⁢(x)

であることより

[(1−x2)⁢dd⁢x−m⁢x]⁢(−1)m⁢(n−m)!(n+m)!⁢Pnm⁢(x)=1−x2⁢(−1)m−1⁢(n−m+1)!(n+m−1)!⁢Pnm−1⁢(x)

これを整理すると(E.25)式が得られる。 またこれら2式の差をとって整理すると

Pnm+1⁢(x)−2⁢m⁢x1−x2⁢Pnm⁢(x)+(n+m)⁢(n−m+1)⁢Pnm−1⁢(x)=0 (E.26)

のように、微分を含まない3項漸化式も得られる。

さらに、陪数mは同じで次数 n が異なるものを結ぶ漸化式の例の1つとして、

(n−m+1)⁢Pn+1m⁢(x)−(2⁢n+1)⁢x⁢Pnm⁢(x)+(n+m)⁢Pn−1m⁢(x)=0 (E.27)

が挙げられる。 この漸化式は式(E.6)と(E.11)、および式 (E.22)より導かれる。 まず式(E.11)の両辺にdm−1/d⁢xm−1を作用させ てみると

0 =dm−1d⁢xm−1⁢[Pn+1′⁢(x)−x⁢Pn′⁢(x)−(n+1)⁢Pn⁢(x)]
=dm−1d⁢xm−1⁢d⁢Pn+1⁢(x)d⁢x−dm−1d⁢xm−1⁢[x⁢d⁢Pn⁢(x)d⁢x]−(n+1)⁢dm−1⁢Pn⁢(x)d⁢xm−1
=dm⁢Pn+1⁢(x)d⁢xm−x⁢dm⁢Pn⁢(x)d⁢xm−(m−1)⁢dm−1⁢Pn⁢(x)d⁢xm−1−(n+1)⁢dm−1⁢Pn⁢(x)d⁢xm−1
=dm⁢Pn+1⁢(x)d⁢xm−x⁢dm⁢Pn⁢(x)d⁢xm−(n+m)⁢dm−1⁢Pn⁢(x)d⁢xm−1
=(1−x2)−m/2⁢{Pn+1m⁢(x)−x⁢Pnm⁢(x)−(n+m)⁢(1−x2)1/2⁢Pnm−1⁢(x)}

いっぽう、式(E.6)の両辺にdm/d⁢xmを作用させてみると

0 =dmd⁢xm⁢[(n+1)⁢Pn+1⁢(x)+n⁢Pn−1⁢(x)−(2⁢n+1)⁢x⁢Pn⁢(x)]
=(n+1)⁢dm⁢Pn+1⁢(x)d⁢xm+n⁢dm⁢Pn−1⁢(x)d⁢xm−(2⁢n+1)⁢dmd⁢xm⁢[x⁢Pn⁢(x)]
=(n+1)⁢dm⁢Pn+1⁢(x)d⁢xm+n⁢dm⁢Pn−1⁢(x)d⁢xm−(2⁢n+1)⁢[x⁢dm⁢Pn⁢(x)d⁢xm+m⁢dm−1⁢Pn⁢(x)d⁢xm−1]
=(n+1)⁢dm⁢Pn+1⁢(x)d⁢xm+n⁢dm⁢Pn−1⁢(x)d⁢xm−(2⁢n+1)⁢x⁢dm⁢Pn⁢(x)d⁢xm−(2⁢n+1)⁢m⁢dm−1⁢Pn⁢(x)d⁢xm−1
=(1−x2)−m/2⁢{(n+1)⁢Pn+1m⁢(x)+n⁢Pn−1m⁢(x)−(2⁢n+1)⁢x⁢Pnm⁢(x)−(2⁢n+1)⁢m⁢(1−x2)1/2⁢Pnm−1⁢(x)}

であるから

0 =Pn+1m⁢(x)−x⁢Pnm⁢(x)−(n+m)⁢(1−x2)1/2⁢Pnm−1⁢(x)
0 =(n+1)⁢Pn+1m⁢(x)+n⁢Pn−1m⁢(x)−(2⁢n+1)⁢x⁢Pnm⁢(x)−(2⁢n+1)⁢m⁢(1−x2)1/2⁢Pnm−1⁢(x)

がいえる。 この両式を用いてPnm−1⁢(x)を消去すると 式(E.27)が得られる。

E.2.3 Legendreの陪微分方程式

Legendre陪関数は次の微分方程式を満たす。

dd⁢x⁢[(1−x2)⁢d⁢Pnm⁢(x)d⁢x]+[n⁢(n+1)−m21−x2]⁢Pnm⁢(x)=0 (E.28)

これを「Legendreの陪微分方程式」という。

ここで、x=cos⁡θ (d⁢x=−sin⁡θ⁢d⁢θ) と変数変換すると

0=[1sin⁡θ⁢dd⁢θ⁢(sin⁡θ⁢dd⁢θ)+n⁢(n+1)−m2sin2⁡θ]⁢Pnm⁢(cos⁡θ) (E.29)

を得る。

E.2.4 Legendre陪関数の用途の例: 3次元極座標系におけるラプラ ス方程式の変数分離解

3次元球座標系でスカラー量fのラプラス方程式に

f⁢(r,θ,ϕ)=∑n,mRnm⁢(r)⁢Pnm⁢(cos⁡θ)⁢exp⁡(i⁢m⁢ϕ)

という形 (変数分離形という) を仮定して代入・整理すると

0 =∑n,m1r2⁢exp⁡(−i⁢m⁢ϕ)×{+dd⁢r⁢(r2⁢d⁢Rnmd⁢r)⁢Pnm+Rnm⁢[1sin⁡θ⁢dd⁢θ⁢(sin⁡θ⁢dd⁢θ)−m2sin2⁡θ]⁢Pnm⏟=−n⁢(n+1)⁢Pnm}
=∑n,m1r2⁢[1Rnm⁢dd⁢r⁢(r2⁢d⁢Rnmd⁢r)−n⁢(n+1)]⁢Rnm⁢Pnm⁢exp⁡(−i⁢m⁢ϕ)

これが全てのr、θ、ϕで成り立つためには、

0=1Rnm⁢dd⁢r⁢(r2⁢d⁢Rnmd⁢r)−n⁢(n+1)

でなければならない。 そのためには、cnmを定数として、

Rnm=cnm⁢rnあるいはRnm=cnm⁢r−(n+1)

地球惑星の外部を考える際には、解は r→∞で有界であるべきだから

f(r,θ,ϕ)=∑n,mcnm⁢r−(n+1)⁢Pnm⁢(cos⁡θ)⁢exp⁡(i⁢m⁢ϕ)

のように変数分離解が与えられる。

E.2.5 Legenrde 陪関数の直交性

mを一定とすると、Pnm は nに関して次のような直交性をもつ。

∫−11Pnm⁢(x)⁢Pn′m⁢(x)⁢𝑑x=22⁢n+1⁢(n+m)!(n−m)!⁢δ⁢n⁢n′ (E.30)

E.3 準備その3: 完全正規化されたLegendre陪関数

ここまでで定義したルジャンドル陪関数では、(n や) m が大きくなると、 関数の値が大きくなり過ぎてしまうのが不便である。 そこで、これを避けるようにルジャンドル陪関数を「正規化」したものがいくつ か提案されている。

その1つが「完全正規化されたルジャンドル陪関数」P¯n⁢mであり、 以下のように定義されている。

P¯n⁢m={2⁢n+1⁢Pnm(m=0⁢の⁢と⁢き)2⁢(2⁢n+1)⁢(n−m)!(n+m)!⁢Pnm(m>0⁢の⁢と⁢き) (E.31)

あるいは、

cm={2(m=0⁢の⁢と⁢き)1(m=1,2,3,…⁢の⁢と⁢き) (E.32)

という係数cmを用いて

P¯n⁢m=2⁢(2⁢n+1)cm⁢(n−m)!(n+m)!⁢Pnm (E.33)

と書くこともできる。 なおこの cm は cos の直交関係に由来しているもので、実際

∫02⁢πcos2⁡m⁢ϕ⁢d⁢ϕ=cm⁢π={2⁢π(m=0⁢の⁢と⁢き)π(m=1,2,3,…⁢の⁢と⁢き)

であることが確認できる。

mを一定とすると、P¯n⁢m は nに関して次のような直交性をもつ。

∫−11P¯n⁢m⁢(x)⁢P¯n′⁢m⁢(x)⁢𝑑x=4cm⁢δn⁢n′={2⁢δn⁢n′(m=0⁢の⁢と⁢き)4⁢δn⁢n′(m>0⁢の⁢と⁢き) (E.34)

ここで用いた「正規化」は、次に登場する球面調和関数の定義で用いられている ものとも異なることに注意。

E.4 球面調和関数の定義と性質

球面調和関数 (あるいは球面関数)Yℓm⁢(θ,ϕ) は Legendre 陪関 数Pℓm と指数関数を用いて

Yℓ(θ,ϕ)m=2⁢ℓ+14⁢π⁢(ℓ−m)!(ℓ+m)!Pℓm(cosθ)exp(imϕ) (E.35)

により定義される (位相因子(−1)mをつける流儀もあり)。 ここでθは補緯度、ϕは経度である。 添字のℓ (degree) とm (order) は整数であって、ℓ≥0かつ −ℓ≤m≤ℓに限られる。 式(E.35)内のLegendre陪関数Pℓm⁢(cos⁡θ) は Legendre 多項式 Pℓ⁢(cos⁡θ)=Pℓ0⁢(cos⁡θ) から

Pℓ⁢(cos⁡θ) =12ℓ⁢ℓ!⁢dℓd⁢(cos⁡θ)ℓ⁢(cos2⁡θ−1)ℓ (E.36)
Pℓm⁢(cos⁡θ) =(−sin⁡θ)m⁢dm⁢Pℓ⁢(cos⁡θ)d⁢(cos⁡θ)m,(for ⁢0≤m≤ℓ) (E.37)
Pℓ−m⁢(cos⁡θ) =(−1)m⁢(ℓ−m)!(ℓ+m)!⁢Pℓm⁢(cos⁡θ) (E.38)

ℓとmについて、

  • •

    2⁢m は、Yℓm⁢(θ,ϕ)=0 を満たすϕの数を表す。

  • •

    ℓ−mは、Yℓm⁢(θ,ϕ)=0 を満たすθの数を表す。

この定義によれば、ℓ=0,1,2,3に対するYℓm⁢(θ,ϕ)の具体的な 関数形は次のようになる。

ℓ Pℓ⁢(cos⁡θ) Pℓm Yℓm
0 1 P00=1 Y00=14⁢π
1 cos⁡θ P1−1=12⁢sin⁡θ Y1−1=12⁢32⁢π⁢sin⁡θ⁢exp⁡(−i⁢ϕ)
P10=cos⁡θ Y10=34⁢π⁢cos⁡θ
P11=−sin⁡θ Y11=−38⁢π⁢sin⁡θ⁢exp⁡(i⁢ϕ)
2 12⁢(3⁢cos2⁡θ−1) P2−2=18⁢sin2⁡θ Y2−2=18⁢30π⁢sin2⁡θ⁢exp⁡(−2⁢i⁢ϕ)
P2−1=12⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ Y2−1=12⁢152⁢π⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ⁢exp⁡(−i⁢ϕ)
P20=12⁢(3⁢cos2⁡θ−1) Y20=12⁢54⁢π⁢(3⁢cos2⁡θ−1)
P21=−3⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ Y21=−12⁢152⁢π⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ⁢exp⁡(i⁢ϕ)
P22=3⁢sin2⁡θ Y22=18⁢30π⁢sin2⁡θ⁢exp⁡(2⁢i⁢ϕ)
3 12⁢(5⁢cos3⁡θ−3⁢cos⁡θ) P3−3=sin3⁡θ48 Y3−3=18⁢35π⁢sin3⁡θ⁢exp⁡(−3⁢i⁢ϕ)
P3−2=18⁢sin2⁡θ⁢cos⁡θ Y3−2=18⁢210π⁢sin2⁡θ⁢cos⁡θ⁢exp⁡(−2⁢i⁢ϕ)
P3−1=18⁢sin⁡θ⁢(5⁢cos2⁡θ−1) Y3−1=18⁢21π⁢sin⁡θ⁢(5⁢cos2⁡θ−1)⁢exp⁡(−i⁢ϕ)
P30=12⁢(5⁢cos3⁡θ−3⁢cos⁡θ) Y30=12⁢74⁢π⁢(5⁢cos3⁡θ−3⁢cos⁡θ)
P31=−32⁢(5⁢cos2⁡θ−1)⁢sin⁡θ Y31=−38⁢73⁢π⁢(5⁢cos2⁡θ−1)⁢sin⁡θ⁢exp⁡(i⁢ϕ)
P32=15⁢cos⁡θ⁢sin2⁡θ Y32=14⁢1052⁢π⁢cos⁡θ⁢sin2⁡θ⁢exp⁡(2⁢i⁢ϕ)
P33=−15⁢sin3⁡θ Y33=−18⁢35π⁢sin3⁡θ⁢exp⁡(3⁢i⁢ϕ)
4 18⁢(35⁢cos4⁡θ−30⁢cos2⁡θ+3) P4−4=1384⁢sin4⁡θ Y4−4=316⁢352⁢π⁢sin4⁡θ⁢exp⁡(−4⁢i⁢ϕ)
P4−3=−148⁢sin3⁡θ⁢cos⁡θ Y4−3=38⁢35π⁢sin3⁡θ⁢cos⁡θ⁢exp⁡(−3⁢i⁢ϕ)
P4−2=148⁢sin2⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−1) Y4−2=158⁢110⁢π⁢sin2⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−1)⁢exp⁡(−2⁢i⁢ϕ)
P4−1=−18⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−3) Y4−1=38⁢5π⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−3)⁢exp⁡(−i⁢ϕ)
P40=18⁢(35⁢cos4⁡θ−30⁢cos2⁡θ+3) Y40=316⁢1π⁢(35⁢cos4⁡θ−30⁢cos2⁡θ+3)
P41=52⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−3) Y41=−38⁢5π⁢sin⁡θ⁢cos⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−3)⁢exp⁡(i⁢ϕ)
P42=152⁢sin2⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−1) Y42=158⁢110⁢π⁢sin2⁡θ⁢(7⁢cos2⁡θ−1)⁢exp⁡(2⁢i⁢ϕ)
P43=105⁢sin3⁡θ⁢cos⁡θ Y43=−38⁢35π⁢sin3⁡θ⁢cos⁡θ⁢exp⁡(3⁢i⁢ϕ)
P44=105⁢sin4⁡θ Y44=316⁢352⁢π⁢sin4⁡θ⁢exp⁡(4⁢i⁢ϕ)
m=0 m=1 m=2 m=3 m=4
ℓ=1 Refer to caption Refer to caption
ℓ=2 Refer to caption Refer to caption Refer to caption
ℓ=3 Refer to caption Refer to caption Refer to caption Refer to caption
ℓ=4 Refer to caption Refer to caption Refer to caption Refer to caption Refer to caption
Figure 6: いくつかのℓにおける球面調和関数の例。

Yl,−m と Yl⁢m の間には、複素共役の関係

Yℓ−m⁢(θ,ϕ)=(−1)m⁢Yℓm⁢(θ,ϕ)∗ (E.39)

がある。 これは(E.35)と(E.38)から明らかであろう。

球面調和関数の正規直交性

∫0πsin⁡θ⁢d⁢θ⁢∫02⁢πdϕ⁢Yℓm⁢(θ,ϕ)∗⁢Yℓ′m′⁢(θ,ϕ)=δℓ⁢ℓ′⁢δm⁢m′ (E.40)

が得られる。 これより、任意の関数f⁢(r,θ,ϕ) を

f⁢(r,θ,ϕ)=∑ℓ=0∞∑m=−ℓℓfℓ⁢m⁢(r)⁢Yℓm⁢(θ,ϕ) (E.41)

の如く球面調和関数展開できる。 ここで

fℓ⁢m⁢(r)=∫0πsin⁡θ⁢d⁢θ⁢∫02⁢πdϕ⁢f⁢(r,θ,ϕ)⁢Yℓm⁢(θ,ϕ)∗ (E.42)

である。

E.5 球面調和関数の加法定理

3次元球座標系で指定された2つのベクトル 𝒓1=(r1,θ1,ϕ1) と 𝒓2=(r2,θ2,ϕ2) に 対して、これら2つのベクトルのなす角度をγ とおくと

cos⁡γ=(𝒓1,𝒓2)|𝒓1|⁢|𝒓2|=cos⁡θ1⁢cos⁡θ2+sin⁡θ1⁢sin⁡θ2⁢cos⁡(ϕ2−ϕ1)

であるが、このときのルジャンドル多項式Pℓの値について、

Pℓ⁢(cos⁡γ)=4⁢π2⁢ℓ+1⁢∑m=−ℓℓYℓm⁢(θ1,ϕ1)⁢Yℓm⁢(θ2,ϕ2)∗ (E.43)

が成り立つ。 ただし複素共役を意味する ∗ はどちらの Yℓmにつけてもよい。 また、この関係をルジャンドル陪関数で書き直すと、以下のようになる。

Pℓ⁢(cos⁡γ) =Pℓ⁢(cos⁡θ1)⁢Pℓ⁢(cos⁡θ2)+2⁢∑m=1ℓ(ℓ−m)!(ℓ+m)!⁢Pℓm⁢(cos⁡θ1)⁢Pℓm⁢(cos⁡θ2)⁢cos⁡[m⁢(ϕ1−ϕ2)]
=12⁢ℓ+1⁢∑m=0ℓP¯ℓ⁢m⁢(cos⁡θ1)⁢P¯ℓ⁢m⁢(cos⁡θ2)⁢cos⁡[m⁢(ϕ1−ϕ2)] (E.44)

E.6 水平Laplacianへの分離

Laplacian ∇2 をrに関する微分演算子とそれ以外の演算子L2に分 離しておこう。

∇2=1r2⁢∂∂r⁢(r2⁢∂∂r)−1r2⁢L2 (E.45)

ただし、

L2≡−1sin⁡θ⁢∂∂θ⁢(sin⁡θ⁢∂∂θ)−1sin2⁡θ⁢∂2∂ϕ2 (E.46)

である。 これより、

L2⁢Yℓm⁢(θ,ϕ)=ℓ⁢(ℓ+1)⁢Yℓm⁢(θ,ϕ) (E.47)

がいえる。 さらに式(E.45)より、

Dℓ≡1r2⁢∂∂r⁢(r2⁢∂∂r)−ℓ⁢(ℓ+1)r2 (E.48)

と定義すれば、

∇2f⁢(r)⁢Yℓm⁢(θ,ϕ)=Yℓm⁢(θ,ϕ)⁢Dℓ⁢f⁢(r) (E.49)

と書ける。

E.7 トロイダル場とポロイダル場

∇⋅𝒗=0を満たすようなベクトル場 (solenoidal) は、 ポロイダル場𝑺

𝑺≡∇×[∇×(Φr⁢𝒓)]=∇×[∇(Φr)×𝒓] (E.50)

とトロイダル場𝑻

𝑻≡∇×[Ψr⁢𝒓]=∇(Ψr)×𝒓 (E.51)

の和で書くことができる。 各々を球座標系の成分で書き下すと、

𝑺 =(1r2⁢L2⁢Φ,1r⁢∂2Φ∂r⁢∂θ,1r⁢sin⁡θ⁢∂2Φ∂r⁢∂ϕ) (E.52)
𝑻 =(0,1r⁢sin⁡θ⁢∂Ψ∂ϕ,−1r⁢∂Ψ∂θ) (E.53)

となる。 さらにΦやΨを式(E.41)に倣って球面調和関数展開してみよう。 こうして得られる展開係数(rの関数でもある)は

𝑺ℓ⁢m ≡(ℓ⁢(ℓ+1)r2⁢Φℓ⁢m⁢(r)⁢Yℓm,1r⁢d⁢Φℓ⁢md⁢r⁢∂Yℓm∂θ,1r⁢sin⁡θ⁢d⁢Φℓ⁢md⁢r⁢∂Yℓm∂ϕ) (E.54)
𝑻ℓ⁢m ≡(0,Ψℓ⁢m⁢(r)r⁢sin⁡θ∂Yℓm∂ϕ,−Ψℓ⁢m⁢(r)r∂Yℓm∂θ,) (E.55)

となる。