マントル対流数値シミュレーション概論

Appendix D 誤差関数

(February 9, 2022)

この記述は [10] を参考にした。

誤差関数 (error function) とは以下で定義される。

erf(η)=2π0ηexp(-η2)dη (D.1)

同様に補誤差関数 (complementary error function) とは

erfc(η)=1-erf(η) (D.2)

で与えられる。 誤差関数はその名や定義式からも想像される通り、正規分布と密接な関係がある。 これに加えて以下に示す通り、誤差関数は熱伝導方程式の解を記述する役割もあ る。 この性質から、誤差関数は熱境界層内の温度分布を簡便に計算する際にもよく登 場する関数である。

以下では、z>0 に広がる半無限体を考える。 時刻t=0 では内部の温度 T=T1 であったが、時刻t>0 では表面z=0の温 度がT=T0 に瞬間的に変化を加えたとし、その後の内部の温度変化を考える。 式で書くと、

Tt=κ2Tz2 (D.3)
T(t=0,z>0)=T1T(t>0,z=0)=T0T(t>0,z)=T1 (D.4)

である。 温度Tをしかるべく無次元化した量として、

θT-T1T0-T1 (D.5)

を導入する。 これを用いて方程式を書き直すと、

θt=κ2θz2 (D.6)
θ(t=0,z>0)=0θ(t>0,z=0)=1θ(t>0,z)=0 (D.7)

である。

熱伝導問題の性質を考慮すると、θztの2つの変数に依存すると いうよりはむしろ、以下で定義されるηの関数として書くほうが簡単になる。

ηz2κt (D.8)

これは、時間 t の間に拡散で熱が伝わる距離 κt と距離 z との比 (の半分) という意味があることに注意。 これを用いて式(D.6)及び(D.7)を書き直そう。 ここで

θt =dθdηηt=dθdη(-12tz2κt)=dθdη(-η2t)
θz =dθdηηz=dθdη12κt
2θz2 =ddη(θz)ηz=(d2θdη212κt)12κt=d2θdη214κt

であることを用いると、式(D.6)は

-2ηdθdη=d2θdη2 (D.9)

となり、式(D.7)は

θ(η)=0,θ(η=0)=1 (D.10)

と書き直せる。

式(D.9)を解いてみよう。 その際、まずϕdθdη と置いてやると

-2ηϕ=dϕdη-2ηdη=dϕϕ (D.11)

これをηで積分して

-η2=lnϕ-lnc1ϕ=c1exp(-η2)=dθdη (D.12)

を得る。 ここでc1は積分定数である。 これをもう一度ηで積分して

θ =θ(η=0)+c10ηexp(-η2)dη
=c10ηexp(-η2)dη+1 (D.13)

を得る。 積分定数c1を決めるために、ηの極限をとって、

θ(η)=0 =c10exp(-η2)dη+1 (D.14)

であるが、よく知られたGauss積分の公式より

0exp(-η2)dη=12-exp(-η2)dη=π2 (D.15)

であるから結局、

θ =1-2π0ηexp(-η2)dη=erfc(η) (D.16)

を得る。

5に誤差関数erf(η)及び補誤差関数 erfc(η)のグラフを示しておく。

誤差関数
Figure 5: 誤差関数erf(η)及び補誤差関数 erfc(η)のグラフ