研究紹介

研究分野

古脊椎動物学

主に恐竜が生きていた時代 (中生代) の哺乳類の進化を研究しています。 化石や地層を調べることを通して過去の哺乳類の姿やそれを取り巻く世界を探るとともに,そこから私たち自身についての理解をより深めていきたいと考えています。 現在は,石川県の手取層群や兵庫県の篠山層群,そして中国遼寧省の沙海層・阜新層と呼ばれる地層から見つかった,いずれも白亜紀の哺乳類化石の研究をおこなっています。

現在地球上には大きさも姿かたちも様々な哺乳類が大繁栄しています。 哺乳類がこのように大繁栄を始めたのは,今からおよそ 6600 万年前,新生代と呼ばれる時代に入ってからです (そのため新生代は「哺乳類の時代」と呼ばれることがあります)。 しかし哺乳類はその前の中生代と呼ばれる時代 (しばしば「恐竜の時代」とも呼ばれます) から地球上に存在していました。

哺乳類 (広義) が地球上に現れたのは中生代の後期三畳紀,今から 2 億年以上も昔で,恐竜が現れたのとほぼ同じ時期のことだと考えられています。 それ以来,新生代に入るまでの 1 億 5000 万年以上の間,哺乳類は恐竜とともに暮らしてきました。 これは哺乳類の 2 億 2000 万年間にわたる歴史のうち,実に 3 分の 2 以上の期間です。 この長い時間をかけて,哺乳類は着実に進化を続けていました。

中生代の哺乳類は一般に小さく (ネズミくらいからせいぜいイヌ程度の大きさ),同時代の恐竜のように大きさや姿をさまざまに進化させることこそありませんでしたが,中生代の間に哺乳類は,哺乳類だけにしかない,より高度な特徴を次々に獲得していったのです。 だからこそ恐竜が滅びた後に,哺乳類は恐竜にとってかわって大繁栄を始めることができたのでしょう。 中生代は哺乳類にとって,新生代を「哺乳類の時代」にするための,いわば「準備期間」だったのです。 したがって,中生代は私たち哺乳類にとって非常に重要な時期だったし,哺乳類の進化を考える上でとても興味深い時代なのです。

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Tedoribaatar

石川県白山市の手取層群桑島層から見つかった前期白亜紀の哺乳類 (多丘歯類) Tedoribaatar reini Kusuhashi, 2008。 右下顎と第四小臼歯 (頬の側から見ている)。 スケールバーは 2 mm。

多丘歯類は中期ジュラ紀に現れて新生代まで存続したグループだが,始新世~漸新世に絶滅してしまい,今はその姿を見ることはできない。 植物食~雑食に適応していたと考えられていて,齧歯類 (ネズミの仲間) とよく似た頭の形をしていた。 下顎の小臼歯がノコギリのような形をしているのが目立った特徴の 1 つ。

Field research in China

中国遼寧省における日中共同調査の様子 (写真は 2002 年 9 月の調査)。

このあたりには前期白亜紀の石炭を採掘する炭鉱がたくさんあり,炭鉱のズリを丹念に割って化石を探す。 運が良ければ哺乳類や恐竜など前期白亜紀の脊椎動物化石が次々見つかるし,運が悪いと何も見つからない。

地質学

古脊椎動物学も地質学の 1 分野ですが,化石が見つかる見つからないに関わらず,地質を調べる研究も進めています。 地質を調べる方法は様々ですが,その中で特に重点を置いているのは,野外での地表踏査です。 野外で主に地層を調査することを通して,過去の地球表層で何が起こっていたのかを知る手がかりを得たいと考えています。 現在は愛媛にいることもあり,愛媛県内の地層を中心に調べています。 特に興味をもっているのは,ひわだ峠層,久万層群,石鎚層群と呼ばれる新生代の地層・岩石です。 これらの地層・岩石には,日本列島形成の歴史の一部が記録されているからです。

Furuiwaya Fm.

久万層群古岩屋層 (中新統) の礫岩峰 (愛媛県上浮穴郡久万高原町)。

石鎚山周辺からその西方には,およそ 1,500 万年 ~ 2,000 万年ほど前の,久万層群と呼ばれる地層が分布している。 古岩屋層は久万層群の下部を構成する地層で,土石流により堆積したと考えられる礫岩層を主体とする。 当時は日本海が拡大していたことが知られており,久万層群は日本海拡大時の西南日本の様子を記録している貴重な地層の 1 つである。

Hiwadatoge Fm.

ひわだ峠層 (始新統) の礫岩・砂岩層 (愛媛県上浮穴郡久万高原町)。

久万高原町西部には,ひわだ峠層と呼ばれる,5,000 万年近く前の浅い海の地層が分布している。 現在はかなり狭い範囲で露出が確認できるにすぎないが, 九州から関東まで中央構造線の南に帯状に分布する三波川変成岩類がいつ地表に露出したのかを教えてくれるという点で, 非常に重要な地層である。

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