固体地球物理学概論 (2024年前学期) 第03回

固体地球表面の運動 (プレートテクトニクス)

基本用語集 (第2.1.2章、2.1.3章)

  1. リソスフェアとアセノスフェア

    固体地球の最上部を力学的観点から区別したもの。

    • 「リソスフェア (lithosphere)」= 固い表層部、厚さは最大で約100km
    • 「アセノスフェア (asthenosphere)」= その下にあるやわらかい層
    この違いの原因は主に、温度の違いによる流れやすさの違い (冷たいと固い)。 ただし最近はこれとは異なる説も提案されている。

    この力学的な観点による区別と、化学的・岩石学的観点からの区別とは異なることに注意。(図2.5; 右図)

    • 「リソスフェア」 = 「地殻 (crust)」+「マントル (mantle)」の最上部
    「地殻」と「マントル」は構成している岩石の種類の違いによって区別されている。

  2. 「プレート (plate)」 = リソスフェアが断片化したもの

    • 地球の表面は十数枚のプレートに分かれており、それぞれが異なった速度と向きで水平に運動している。(図2.6)
    • 他の地球型惑星 (水星、金星、火星) や月では、表面のリソスフェアが断片化していない (「プレートが1枚だけ」) らしい。

  3. 「プレートテクトニクス (plate tectonics)」

    となり合うプレートとプレートの境界域でのプレート間の相互作用により、地殻活動 (地震・火山・地殻変動・造山活動) をうまく説明する理論。 1960年代に成立。

    • 例えば震源の深さが 100 km よりも浅い地震の震央分布 (図2.8a) より、地震のほとんどは帯状の領域でのみ起こっている。 この「地震の帯」が「プレート境界」に対応している。
    • 火山の分布(図4.9)

大陸プレートと海洋プレート

ごく簡単には、海洋域にあるのが海洋プレートで、大陸域にあるのが大陸プレート。

  1. 海洋プレートの生成・成長・消滅過程

    海洋プレートは中央海嶺で生成され、海溝でマントル中に沈んでいく。 現在の地表に残っている最も古い海洋プレートの年代は約1億8千万年。

  2. 大陸プレートはマントル深部に (大規模には) 沈み込まない。

    上に乗っている地殻 (大陸地殻) が低密度で厚いため、大陸プレートは海洋プレートと比べて軽い。 その分、大陸地殻は非常に古い年代を示す。

3種類のプレート境界

となり合うプレートどうしの運動の向きや、発生する地震のタイプが異なる。 (図2.7) また図2.8に見える「地震の帯」の幅の違いはプレート境界の種類の違いを反映 している。

  1. 発散境界: プレートどうしが離れていき、できたすき間に新たなプレートが誕生。
    • 海洋域では「中央海嶺 (mid ocean ridge)」
    • 大陸域では「リフト帯 (rift)」
  2. 収束境界: プレートどうしが近づいてきて、一方がもう一方の下に潜り込む。
    • 海洋プレートが潜り込むところは「沈み込み帯 (subduction zone)」、
    • 大陸プレートが潜り込むところは「衝突帯 (collision zone)」。

    プレートの収束境界では、震源の深さが 100 km を超えるような地震も起こる (図2.8)。

    マントル中に沈み込んだ海洋プレートを「スラブ」(slab) という。 稍深発 (60〜250 km) から深発 (350〜670 km) 地震の面的な分布「和達-ベニオフ帯 (Wadati-Benioff Zone)」によりイメージできる。

  3. 横ずれ境界: プレートどうしがすれ違う。 特に中央海嶺で顕著にみられる。

さらに、地形にも異なる特徴がみられる。

即ち、プレート境界は線状の地形で特徴づけられる

現在のプレート運動 (第3.4.1章)

ちょっと細か (すぎるかも知れな) い話: プレートの相対運動と絶対運動

上述の手法で求まっているのは プレートとプレートの相対速度 (相対運動) であり、地球深部に対するプレートの速度ではない。 「基準座標系」をどう選べばよいか? は、研究者 (や目的) によってまちまちで、実はちゃんと定まっていない。 その中でもよく使われるものは次の2つ。

過去のプレート運動の復元