1. 不純物として水を含む鉱物(NAMs)の構造と弾性
First principles investigation of the structural and elastic properties of hydrous wadsleyite under pressure
JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 114, B02206, doi:10.1029/2008JB005841, 2009
マントル遷移層主要構成鉱物であるワズレアイトやリングウッダイトは、大量の水を不純物として
保持することができるということが、知られています。
水が保持された岩石は地震波速度に大きな変化を及ぼし、また融点の低下、電気伝導度の増加等、
様々な影響を及ぼす可能性が指摘されています。
図1 地球内部の模式図
図2 含水ワズレアイトの結晶構造
私たちは第一原理電子状態計算法を用いてマントル遷移層上部主要構成鉱物であるワズレアイト中の
安定水素位置と水素を含んだことによる弾性特性の変化について見積もりました。
その結果、ワズレアイト相は3.3 重量パーセントの水を含むことにより15万気圧においてP波・S波それぞれ
最大3.9%、および4.8%減少し、地震波速度へ与える水の影響は非常に大きいことを示しました。
地球深部における地震波速度の低下は通常、温度の上昇によって引き起こされると考えられています。
例えば、1パーセントの地震波速度の低下が200Kの温度上昇によって説明できます。
今回の研究では、この1パーセントの地震波速度の低下はワズレアイトが 約0.7重量パーセントの水を
含むことによっても説明できることを示しました。
図3